【最新】家庭用蓄電池に使える補助金や必要な条件を解説
太陽光パネルで発電した電力を効率的に消費するためには、エネルギーを溜めておく家庭用蓄電池が有効です。しかし、家庭用蓄電池の本体価格は高額であり、設置にかかる費用も含めると100万円以上のコストがかかるケースも珍しくありません。
そこでおすすめなのが、国や自治体が行っているさまざまな補助金制度の活用です。実施年度によっても補助金制度の内容や条件、金額は変わることが多いため、最新の情報を調べておくことが大切です。本記事では、2023年度最新の補助金制度の事例をいくつかご紹介します。
目次
家庭用蓄電池とは
家庭用蓄電池とは、太陽光パネルでの自家発電が難しい夜間や停電時などでも電気を使えるよう、電力を溜めておく大型のバッテリーのことを指します。
蓄電池といえばモバイルバッテリーをイメージする方も多いと思いますが、家庭用蓄電池はまさにモバイルバッテリーを大型化したようなものといえるでしょう。モバイルバッテリーは蓄電容量が限られているため、テレビや冷蔵庫、エアコンなどの消費電力が大きい家電製品を動かすことはできませんが、家庭用蓄電池があればほとんどの家電製品を動かすことができます。
なお、オフィスや工場などの施設では大型の蓄電池が用いられますが、一般家庭の場合はそれほど多くの電力を必要としないため、事業用の蓄電池よりも低用量の家庭用蓄電池が用いられます。
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家庭用蓄電池の価格
家庭用蓄電池は事業用に比べると安価ですが、容量によっても導入価格は大きく変わります。
一般住宅の場合、5kWhから7kWh程度の容量が選択される場合が多く、本体価格と工事費を合わせると70〜150万円程度が相場となります。もちろん、住宅の広さや間取りによってはさらに大容量の蓄電池を導入するケースもあるでしょう。
1kWhあたりの価格としては15〜21万円程度となっているため、設置する蓄電池の容量や機種に応じて予算を検討してみてください。
なお、上記の価格はあくまでも平均的な相場であり、同じ容量・機種であったとしても販売業者によって価格が異なることがあります。
太陽光発電設備のみを対象とした補助金は終了
家庭用蓄電池は太陽光発電設備の導入と合わせて導入されることが多くあります。
太陽光発電設備だけでは電力を溜めておくことはできず、自家発電によって生み出されたエネルギーを消費できるのは日中の時間帯に限られます。しかし、蓄電池があれば日中に発電した電力を溜めておくことができ、電気の需要が高まる夜間に効率よく消費できるのです。
再生可能エネルギーの普及を促進するために、かつては太陽光発電設備を単体で設置した場合でも補助金の対象となっていましたが、近年では補助金の支給条件が変わり「太陽光発電設備+蓄電池」のように複数の設備や機器を導入した場合にのみ支給対象となっています。
ただし、太陽光発電とは関係なく、災害対策や省エネなどの観点から家庭用蓄電池のみを導入する場合でも支給対象となる補助金制度も存在します。
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家庭用蓄電池を対象とした補助金制度とそれぞれの条件
家庭用蓄電池の導入には高額な費用がかかるため、少しでも負担を軽減するためには補助金制度の活用が有効です。
国や自治体ではさまざまな補助金制度が運用されていますが、具体的にどういった内容なのでしょうか。代表的な補助金制度の中身をいくつかご紹介します。
DER補助金
DER補助金は、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)が運用している制度です。分散型エネルギーリソース(DER)を活用するための実証実験に参加することで、設備費や工事費の一部が補助金として支給されます。
太陽光発電設備や蓄電池をネットワークでつなぐことで、非常時においても電力の安定供給を実現できるほか、経済効率の向上や環境配慮型のエネルギー確保にもつながります。また、国としても再生可能エネルギーの普及を目指しており、その一助とするためにもDER補助金は有効です。
DER補助金の支給要件には実証実験への参加が含まれていますが、これは1年間のうち1週間程度に過ぎず、ネットワーク経由で蓄電池を遠隔操作し試験的に充電・放電を行うというもので、実用面で支障をきたしたり手間を要するものではありません。
DER補助金の金額は以下の通りです。
【家庭用蓄電池(第三者所有モデル)】
- 以下1,2の条件を満たす場合:4.7万円 / kWh(初期実効容量)
- 1つでも条件を満たさない場合 4.2万円 / kWh(初期実効容量)
【家庭用蓄電池(第三者所有モデル以外)】
- 以下1,2の条件を満たす場合 3.2万円 / kWh(初期実効容量)
- 1つでも条件を満たさない場合 2.7万円 / kWh(初期実効容量)
※いずれも設備費・工事費の1/3以内
1.レジリエンス
故障や自然災害など有事の際のレジリエンス確保の観点から(a)(b)共に満たしている場合
(a)蓄電システムの早期復旧や原因解明が可能な体制が整えられている。
(b)蓄電システムに異常が見つかった場合に備えて、代替する電池システムの主要部品(電池セル等)を迅速に供給できる拠点が整えられている
2.廃棄物処理法上の広域認定の取得
採用予定の蓄電システムの製造、加工、販売等の事業を行う者が、廃棄物処理法上の広域認定において蓄電池関連製品での認定を取得している
【V2H充放電設備】
設備費の75万円/台(1/2以内)、工事費の40万円(定額)
【上記設備の新規導入に併せたIoT関連機器(EMS機器含む)】
5万円(定額)
【家庭用燃料電池(エネファーム)】
4万円/台(定額)
【既設の家庭用DERをIoT化させるための関連機器】
10万円(定額)
DR補助金
DR補助金制度もSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)が運用している制度です。
電気の需給バランスを安定化させるために、蓄電池などを活用し需給を調整する仕組みをDRとよびます。蓄電池を新規導入する場合に適用される補助金制度であり、SIIに登録済みの蓄電池のみが補助金の支給対象となります。
DR補助金の金額は以下の通りです。
【家庭用蓄電池(第三者所有モデル)】
- 以下1,2の条件を満たす場合:5.2万円 / kWh(初期実効容量)
- 1つでも条件を満たさない場合 4.7万円 / kWh(初期実効容量)
【家庭用蓄電池(第三者所有モデル以外)】
- 以下1,2の条件を満たす場合 3.7万円 / kWh(初期実効容量)
- 1つでも条件を満たさない場合 3.2万円 / kWh(初期実効容量)
※いずれも設備費・工事費の1/3以内
1.レジリエンス
故障や自然災害など有事の際のレジリエンス確保の観点から(a)(b)共に満たしている場合
(a)蓄電システムの早期復旧や原因解明が可能な体制が整えられている。
(b)蓄電システムに異常が見つかった場合に備えて、代替する電池システムの主要部品(電池セル等)を迅速に供給できる拠点が整えられている
2.廃棄物処理法上の広域認定の取得
採用予定の蓄電システムの製造、加工、販売等の事業を行う者が、廃棄物処理法上の広域認定において蓄電池関連製品での認定を取得している
家庭における蓄電池導入促進事業(東京都)
DER補助金およびDR補助金は国の補助金制度ですが、自治体が運営する補助金制度もあります。たとえば、東京都では「家庭における蓄電池導入促進事業」を運営しており、以下の要件に当てはまる場合に補助金が支給されます。
- 都内の住宅に新規に設置された助成対象機器であること
- 令和5年4月1日から令和10年3月31日までの間に助成対象機器を設置すること
- 蓄電池システムの機器費が蓄電容量1kWh当たり20万円以下であること
- 国が令和3年度以降に実施する補助事業事業における補助対象機器として一般社団法人環境共創イニシアチブ以下、「SII」という。)により登録されているものであること
- 対象機器について、都及び公社の他の同種の助成金を重複して受けていないこと
- 助成対象者のうち、独立行政法人、地方独立行政法人並びに国及び地方公共団体の出資、出えん等の比率が50%を超える法人については、公社が求めた場合、住宅のエネルギー消費量削減に関する普及啓発を行い、当該普及啓発について報告すること
補助金の支給額は以下の通りです。
【太陽光発電システムが4kW以上の場合】
以下のうちいずれか小さい額(最大1,500万円)
(a)蓄電容量(6.34kWh以上):15万円/kWh(100kWh未満)
(b)蓄電容量(6.34kWh未満):19万円/kWh(最大95万円)
(c)太陽光発電システムの発電出力:30万円/kW
(d)助成対象経費×3/4の額
【太陽光発電システムが4kW未満か、太陽光発電システムの出力がわからない場合】
以下のうちいずれか小さい額
(a)蓄電容量(6.34kWh以上):15万円/kWh(最大120万円)
(b)蓄電容量(6.34kWh未満):19万円/kWh(最大95万円)
家庭用蓄電池を安く導入するためには複数社に見積もりを依頼しよう
家庭用蓄電池の導入には高額な費用がかかりますが、今回紹介した補助金制度を活用することで出費を抑えられるでしょう。しかし、もともとの導入費用が高額であると補助金制度を活用したとしても負担は大きく、割安感が得られにくいものです。
補助金制度を活用しつつ、少しでも費用を抑えるためには、複数の販売店や施工業者から見積もりをとって比較することが大切です。
本体の価格が安価でも、設置にかかる工事費も含めると割高になってしまうケースもあることから、工事費も含めた総額の見積もりを出してもらい複数社を比較することを心がけましょう。