住宅太陽光発電の義務化っていつから?補助金や導入におけるポイント、問題点についても
環境に優しいエネルギーとして、太陽光発電システムが注目されるようになりました。
政府や自治体も太陽光発電システムの導入に積極的な姿勢を見せており、今後さらに普及していく可能性が高いといわれています。
そのような中で、「太陽光発電システムの設置義務化」というニュースも目にするようになりました。
なぜ義務化が検討されているのか、その背景や経緯について紹介するとともに、設置が義務化される時期などについても詳しく解説しましょう。
目次
住宅用太陽光発電システムの設置義務化目標や時期
一般住宅用の太陽光発電システムはすでに普及し始めていますが、法律で明確に義務化がされるかどうかは検討段階であり、
正式に決定しているものではありません。
しかし、政府は太陽光発電の普及に向けて積極的に動いているのは事実であり、「2030年を目処に新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を設置すること」を具体的な目標としています。
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住宅用太陽光発電の義務化が検討されている背景・理由
すでに太陽光発電システムは企業を中心に積極的に導入が進んでいますが、これを一般住宅にまで拡大する理由は何なのでしょうか。
もっとも大きな理由として挙げられるのは、カーボンニュートラル(脱炭素)の実現があります。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から吸収量の差し引きをゼロにすることを意味します。
政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すとしており、これは国際社会に対して明確にコミットしている内容でもあります。
温室効果ガスのなかでも特に排出量の多いのがCO2であり、この大半が化石燃料を使った発電によるものであることが分かっています。
カーボンニュートラルを実現するためには、化石燃料を由来としたエネルギー比率を低く抑えることが重要なポイントといえるのです。
太陽光発電システムを導入することでエネルギーの自給自足が実現でき、発電における化石燃料の使用量を大幅に低減できると考えられています。
住宅用太陽光発電義務化の時期
冒頭でも紹介した通り、住宅用太陽光発電システムの義務化は具体的に決定したものではありません。
そのため、明確な時期も未定となっているのが現状です。
ただし、政府が2030年までに6割の新築戸建住宅に太陽光発電システムの設置を目指している方針は変わりないため、近い将来制度化される可能性は十分あるといえるでしょう。
ちなみに、現在検討されているのはあくまでも「新築戸建住宅」のみであり、既存の住宅にまで範囲を拡大するかどうかも明確にはなっていません。
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住宅用太陽光発電義務化に向けた自治体の動き
住宅用太陽光発電システムの設置が推進されているなかで、自治体のなかには独自の条例やルールを具体的に策定したり、検討に入ったところもあります。
京都市
京都市では、延べ床面積2000平方メートル以上の建物を新築または増築する場合、条例によって太陽光発電設備を含む再生可能エネルギー設備の設置を義務化しました。
2000平方メートル以上となると、おもに事業者が保有する施設や工場などが対象となるため一般住宅は対象外ですが、全国でもいち早く太陽光発電の義務化を実現した自治体です。
東京都
東京都は、戸建住宅を新築する場合に太陽光発電システムの設置を義務化する制度を今後創設していくことを決定しました。ただし、義務化の対象となるのは建物の所有者や購入者ではなく、住宅を建設する事業者となる予定です。
また、すべての事業者が対象となるものではなく、総延べ床面積で年間2万平方メートル以上の住宅を手掛ける事業者のみに限定される方向です。
個人や家族、少ない従業員で経営している小規模な工務店や建設会社も多いですが、上記の条件を満たさない事業者は義務化から除外されます。
京都市のように事業者を対象に太陽光発電システムの設置を義務化した自治体はありましたが、住宅用太陽光発電の義務化に向けて具体的な方針を打ち出したのは東京都が初となります。
今後、東京都に続いて住宅用太陽光発電の設置義務化に踏み切る自治体も出てくる可能性は十分あるでしょう。
住宅用太陽光発電義務化に向けた障壁や問題点
環境問題を考えたとき、住宅用太陽光発電の設置義務化はメリットの大きい施策と考えられます。
しかし、それと同時に障壁や問題点があることも事実です。
設置費用・維持費の負担増
太陽光発電システムには設置費用とメンテナンスコストがかかります。
新築住宅の場合、100万円以上の設置費用がかかるケースも多いため、購入者にとってはコスト負担に直結するでしょう。
義務化に踏み切る以上、国や自治体から何らかの補助や助成制度が組み込まれる可能性はありますが、設置費用と維持費のすべてを行政が負担することは現実的ではありません。
住宅購入者にとっての費用負担と、行政側がどの程度補助や助成をするのか、今後難しい調整が求められるでしょう。
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地域によって異なる発電効率
太陽光発電は天候によって発電効率が大きく左右されます。
特に梅雨時や冬季など日照時間が短い季節は発電効率が低下するため、従来のように電力会社からの供給に頼らざるを得ないケースもあるでしょう。
また、そもそも日照時間は地域によっても異なり、年間を通じて2300時間以上の県もあれば1500時間台の県もあります。
また、豪雪地帯では冬季間の発電が見込めないことも考えられます。
このような背景もあり、そもそも全国を対象に設置を義務化するのか、対象エリアを絞り込んで義務化をスタートするのかなど、細かいルール作りが求められるでしょう。
住宅用太陽光発電システム導入のメリット
さまざまな問題点がクリアされ住宅用太陽光発電の義務化がスタートした場合、どのようなメリットが想定されるのでしょうか。
今回は代表的な3つのポイントに絞って紹介します。
①電気代の節約
もっとも大きなメリットとして期待されるのが、電気代の節約です。
太陽光発電システムを導入することで、電気の自給自足が実現できるようになります。
従来のように電力会社から購入する量が減り、ランニングコストを抑えられるでしょう。
②災害時に非常用電源として活躍する
災害の多い日本では、いつ停電が発生してもおかしくない状況にあります。
たとえば、猛暑の期間に停電が発生すると、一切の空調が効かなくなり熱中症にかかるリスクが増大します。
また、スマートフォンやタブレット端末の充電もできなくなり、停電が長期化すると情報を得る手段がなくなってしまうことも考えられるでしょう。
東日本大震災の時は停電が発生してから、3日後に解消した割合が約80%で、地震発生から8日後に解消したのが約94%でした。
また、その他解消が遅かったエリアでは、停電から3カ月以上かかって解消したエリアもあったと言われています。
そんな状況下でも太陽光発電システムを導入していれば、電気の供給がストップしても自前で電力を補うことができます。
小型の発電機よりも多くの電力を得られるため、空調設備も普段通り稼働でき安心です。
③環境にやさしい
「カーボンニュートラル」や「脱炭素」といったキーワードの認知度が上がり、環境問題に積極的に取り組む人や企業も増えています。
日本において特にCO2排出量が多いのはエネルギー分野であり、火力発電からのCO2排出は大きな割合を占めています。
太陽光発電システムを導入する住宅が増えれば増えるほど、CO2排出量が減り地球温暖化の防止に役立つと考えられます。
住宅用太陽光発電導入のデメリット
太陽光発電システムの導入は決してメリットばかりとは限らず、デメリットもあることは事実です。
たとえば、住宅用太陽光発電システムの導入には100万円以上のコストがかかるケースもあるほか、定期的なメンテナンスも必要です。
屋根上に設置している場合、メンテナンスは高所作業となることから専門業者へ依頼しなければなりません。
簡単な清掃と点検でも費用がかかる場合があるため、その辺りも考慮しておく必要があります。
なお、住宅用太陽光発電のデメリットや導入時に覚えておきたいポイントについては、「太陽光業者が教える住宅用太陽光発電のデメリットと設置前に知っておくべき4つのポイント」の記事でも詳しく紹介しているため、ぜひこちらも参考にしてみてください。
2022年に利用できる太陽光発電の補助金
一般住宅への太陽光発電システムの導入を後押しするために、費用負担を少しでも軽減できるようさまざまな補助金制度を運用している自治体もあります。
たとえば、東京都台東区には「再生可能エネルギー機器等助成金」という補助金制度があり、太陽光発電システム1kWあたり5万円の補助金が支給され、上限20万円まで受け取ることができます。
また、品川区の「太陽光発電システム設置助成事業」では、1kWあたり3万円、上限9万円まで支給対象となります。
自治体によっても補助金額や上限額、支給条件は異なるため、まずは現在居住している自治体の窓口やホームページなどで確認してみましょう。
住宅用太陽光発電を導入するうえでのポイント
太陽光発電システムのメリットを最大限活かすためには、どのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。
導入前に覚えておきたい2つのポイントを紹介します。
①早めに取り組んだ方が良い
これから住宅用太陽光発電システムの導入を検討している方は、なるべく早めに取り組むのがおすすめです。
早めに太陽光発電システムを設置できれば、ランニングコストを削減できる期間が長くなり、その分多くの恩恵を受けられます。
②補助金を活用する
少しでも導入費用を抑えるためにも、補助金制度はフルに活用することがおすすめです。
自治体が独自に運用している補助金制度は、期間が限定されていたり予算が限られていたりするケースも多いものです。
そのため、導入を先延ばしにしていると補助金を活用したいときにすでに終了していた、といった事態にもなりかねません。
補助金の申請に間に合うよう、できるだけ早めに導入準備を進めましょう。
◆住宅太陽光発電設置の流れについてはこちら
まとめ
今回紹介してきたように、住宅用太陽光発電システムの設置義務化は一部の自治体で検討されているものの、具体的な時期までは決まっていないのが現状です。
また、政府として2030年までに新築住宅の60%に太陽光発電システムを設置するといった目標はあるものの、今後義務化されるかどうかは不透明な状況です。
しかし、太陽光発電システムを導入することで節電や非常用電源としての活用といったメリットが得られることも事実です。
自治体の中には独自の補助金制度を運用しているところもあるため、できるだけ早めに導入に向けて取り組んでみてはいかがでしょうか。
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